はじめに
子育てをしていると、どうしても焦ったりイライラしたりして普段では使わないような、綺麗じゃない言葉を口にしてしまうことがありますよね。
そんな自分に嫌気がさしてしまったり、泣いているわが子を見てもうちょっと優しく言うことは出来なかったのかなと自分を責めてしまうこともあるのではないでしょうか。
しかし、この記事をご覧になっているということは、子どものことを思って少しでも良い表現をしてあげようと努力している最中だと思います。
そのお子さんを思う気持ちが素晴らしく、頑張っている姿はお子さんにいつか必ず伝わる日が来ます。
この記事がそんな努力家のママの手助けになれば幸いです。
関連記事に「夫に休日はあっても、ママに休日は無いの」がありますので、興味のある方はご覧ください。
ネガティブな言葉はなぜ良くないのか
「自尊感情」と「他者信頼」を低下させる
京都女子大学発達教育学部の森下正康さん、後藤早紀さん著作の「児童期の母親の言葉かけと女子大学生の自尊感情や他者信頼 : 具体的な場面での言葉かけと特性に関する言葉かけの影響」によると
⑴ 児童期の母親の「ポジティブ」な言葉かけは, 子どもの「自尊感情」と「他者信頼」を高めていた。それに対して, 児童期の母親の「ネガティブ」な言葉かけは, 「自尊感情」と「他者信頼」を低下させていた。(2) 児童期の「ポジティブ」な言葉かけは「受容的」言葉かけを高め, 「ネガティブ」な言葉かけは「拒否的」言葉かけを高めていた。(3)また, 「ポジティブ」な言葉かけは「感謝」の言葉かけを高め, 「ネガティブ」な言葉かけは「感謝」の言葉かけを低下させていた。そして, 「感謝」の言葉かけは「他者信頼」を高めていた。分散分析の結果,「受容的」言葉かけや「感謝」の言葉かけが多い場合に, 「ネガティブ」な言葉かけあるいは「否定的」言葉かけが多いとき, 「他者信頼」得点が高いことが注目された。以上の結果から, 子どもの自尊感情や他者信頼に対して, 特性に関する言葉かけの影響のほうが具体的な場面での言葉かけの影響よりも大きいことと, 両方の言葉かけのパターンが影響していることが示唆された。
情報が多いですが、大事なのは最初の児童期の母親の「ポジティブ」な言葉かけは, 子どもの「自尊感情」と「他者信頼」を高めていた。それに対して, 児童期の母親の「ネガティブ」な言葉かけは, 「自尊感情」と「他者信頼」を低下させていた。という点です。
自尊感情とは
自尊感情とは自分自身を価値のある存在だと思うことです。言い換えれば自己肯定感と言えます。内閣府のデータによると
日本の若者のうち,自分自身に満足している者の割合は5割弱,自分には長所があると思っている者の割合は7割弱で,いずれも諸外国と比べて日本が最も低い。年齢階級別にみると,特に10代後半から20代前半にかけて,諸外国との差が大きい。
とあり、日本では非常に自己肯定感が低いのがわかります。子どもの自己肯定感が母親の声掛けにより影響を受けると考えると、ネガティブな声掛けが良くないと言えます。
他者信頼とは
他者信頼とは自分以外の他者を信頼するということです。
信頼とは未来のことに対して相手を信じ、頼ることです。
「未来のこと」に対してというのが重要で、未来は不確定であり何を信じてよいのか分かりません。そんな中で信頼できるというのは生きていく中で非常に重要です。
イソップ寓話の「オオカミ少年」はその信頼の低下を表現した物語となっています。わかりやすく表現されているので一度ご覧になってみてください。
子どもだけでなく自分の感情にも影響する
日本では言霊という言葉があるように言葉に霊的な力が宿ると考えられてきました。
とりわけ自分の発生する声は、自身が一番近くで聞いており、相手に伝える一方で自分自身にも伝えています。
他者の声であれば集中していたりして聞こえないことがありますが、自身の声は自分自身で考え発しているため必ず自分に届きます。
スピリチュアルな話になってしまいますが、自身の言霊が深層心理に影響し、感情からネガティブになってしまうことも考えられます。
そのため、自身の為にもお子さんのためにもポジティブな声掛けが必要です。
怒るのは全面的に悪なのか?
おこるとネガティブな言葉が出ちゃうから怒らないようにした方がいいんじゃない?
でも悪いことしたらちゃんと怒らなきゃ...
ネガティブな言葉を言わないようにしようとするあまり、怒らないように怒らないようにしてしまいますよね。
しかし論文には
「感謝」の言葉かけの多いなかで「否定的」な言葉かけがあるほうが他者信頼を高めると解釈される。これは予想していなかった結果である。「否定的」言葉かけは,「感謝」の言葉かけや「受容的」言葉かけと相関はなかった。したがって日常場面での「否定的」言葉かけは,特に拒否的な母親の態度を反映したものではないようである。したがって,手伝いなどをしたときに「感謝」の言葉かけをきちんとするが,注意すべき時には注意するというような否定的な言葉かけがある親子関係のなかで,親子の信頼関係が形成され,他者信頼が形成されるのかもしれない。
とあります。
つまり、ポジティブな声掛けを心がけて、感謝をちゃんと伝えれば、注意すべき時の否定的な声掛けはむしろ、親子の信頼関係が形成され、それに伴い他者信頼が形成されることが考えられるようです。
ネガティブな言葉の言い換え方法
ネガティブな言葉とポジティブな言葉は相対する関係にあります。
そのため、ポジティブな言葉を否定する形で伝えると、本来はネガティブな言葉で伝えたいことがポジティブな言葉として伝えることが出来ます。
例:ダメ→良くない
また子どもに分かるような言葉で+αしてあげると伝わりやすくなります。
ネガティブ→ポジティブ言い換え例
よく子どもに言ってしまう言葉をいくつか取り上げてポジティブな言葉に変換します。
おもちゃは投げちゃダメって何度言ったら分かるの!
→おもちゃを投げるのは良くないよ!○○ちゃんも投げられたら痛いでしょ?もしも○○ちゃんが投げられてケガしたらママも悲しくなっちゃうよ。
何回同じ失敗するの!
→今回は成功できなかったね!どうしたらできるようになるか考えてみようね!
終わりに&まとめ
子育てをしているとついつい余裕がなくなって、言葉が綺麗じゃなくなったり、言い方が強くなったりしてしまいますよね。
ネガティブな声掛けは子どものみならず、自分の感情にも影響してしまうので負のスパイラルに陥ってしまいがちです。
そのため、普段から少しずつポジティブな言い換えを意識して子どもに伝えるようにしていきましょう。
ポイント
- 子どもへのネガティブな声掛けは「自尊感情」と「他者信頼」を低下させる
- 普段から感謝の気持ちを伝えていれば、注意すべき時の否定的な声掛は親子の信頼関係が構築される
- ポジティブな言葉を否定するように考えると言葉が出てきやすい(例:「おもちゃは投げちゃダメ、何度言ったらわかるの!」→「おもちゃを投げるのは良くないよ、○○ちゃんも投げなれたら痛いでしょ」)
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